にせねこメモ

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Adobe Illustrator CS6日本語版でタイ文字やアラビア文字を組む

Adobe CS6ソフトウェアを学生版の買い切りで購入して以来愛用しているが、InDesignはともかくIllustratorはタイ文字やアラビア文字といった複雑なテキスト配置を要する用字系(complex script)をまともに表示できなかったりと不満があった。しかし、Illustratorでも裏技的な方法でタイ文字やアラビア文字などを正しく表示することができるらしい。

Adobe InDesign CS6日本語版の多言語対応

Adobe InDesign CS6日本語版では「段落」パネルのメニューから「Adobe 多言語対応コンポーザー」が選択でき、それによってタイ文字やアラビア文字を一応まともに組むことができる。
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文字を入力してみると次のようになる。
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フォントはアラビア文字Times New Roman、タイ文字はAngsana New、ヒンディー語Adobe Devanagariを指定した。

ただし、「段落」パネルは書字方向の設定(RTL)に対応していない様で、RTL言語を組むための機能が揃っているとはいえないようだ。RLM (U+200F RIGHT-TO-LEFT MARK)を挿入することによって一応右横書きとして妥当な表示にはなるので、日本語の中にアラビア語を挿入するなどの場合には十分使えるのではないかと思う。

Adobe Illustrator CS6日本語版の多言語対応

一方、Adobe Illustrator CS6日本語版では多言語対応コンポーザーなどは選択できず、「Adobe 日本語コンポーザ―」のみとなっている。
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これでは、アラビア文字のような右から左に書くもの(RTL)であったり、同じ文字が語中の位置に形が変わる書字系には対応できない。また、タイ文字の様に記号の位置調整が重要なものも正しく表示されない。次の画像が入力例である。
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アラビア文字のひどさは言うまでもないが、タイ文字の2行目において、文字の上方で縦方向に2段積み重なっていた記号が重なってしまっている。また、ヒンディー語は母音の再配置ができていない。これでは使い物にならない。

World-Ready Comopser

ところで、調べていたら偶然、CS4以降のAdobeソフトウェア(InDesign, Photoshop, Illustrator)にはWorld-Ready Composerが実装されているということを知った。次の記事である。

これによると、ソフトウェアの中東版向けに右から左への横書きや語の位置による字形の置き換え(contextual substitution)のような機能が存在していたが、CS4からそれが中東版以外のソフトにもWorld-Ready Composerとして実装されたとのことである。

ただし、Illustratorなどにおいては、World-Ready ComposerはAPIとしては存在しているが、先に挙げたようにUIからアクセスすることはできない。とはいえ、実装自体はされているので、中東版のソフトウェアで作ったテキストエリアを含むファイルを開きコピペすることで、CS4のIllustratorでもWorld-Ready Composerを利用できるという。

前掲のWebサイトにおいて、World-Ready Composerを利用したテンプレートファイルが配布されている(“Templates for ID, Ai & PS”でページ内検索するとよい)。
これを開いてテキストエリアを新しいドキュメントにコピペするとWorld-Ready Composerが使えるようになる。


実際にIllustrator CS6 日本語版やってみたのが次である。
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すごい! 完璧! ちなみに文字の再配置を要するデーヴナーグリー(ヒンディー語)などにも対応しているようである。
任意の用字系に対応している訳ではないので、前掲のブログ記事の中のリスト等で確認するとよいと思う。何にせよ、正しく組めているかは(分かる人が)自分の目で見て確認する必要があるだろう。

バージョンCC以降

さて、World-Ready Composerが実装されたのは、全世界的に機能を提供するためであるというのは想像に難くない。実際に、Adobe Illustrator CCにおいて、中東やインド言語のサポートが追加されている。

「環境設定」の「テキスト」から「インド言語のオプションを表示」をオンにすると「中東言語および南アジア言語コンポーザー」が利用できるようになるとのことである。

素晴らしい。CC契約しようかな……。


(20171213 16時追記: アラビア語をコピペミスってたので画像を修正。ちゃんと確認してないのがバレバレですね……。)