にせねこメモ

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8mmフィルムの簡易テレシネを行う

8mmフィルムで制作された自主制作アニメ作品を簡易的にデジタル化する機会があったので、再度やるときのためにメモとして試行錯誤の記録を書いておく。

8mmフィルムとは

ビデオが普及するまでは、映像はフィルムで撮られていた。
大学サークル等での自主制作アニメーションにおいては、主に8mmフィルムが使われていたらしい(アニメーションに限らずだと思うが)。

8mmフィルムと呼ばれるものにもいくつかの規格があるが、自主制作アニメーションで使われるのは富士フィルムシングル8であったようだ。これは構造上、多重露光といった特殊な撮影に必要な巻き戻しができるのがシングル8だけだったためである。
他にはコダック社のスーパー8という規格があり、現像後はシングル8と互換性がある(フィルムの厚みが違う程度)。このためスーパー8用の機材が現像後の工程ではシングル8でも使える。このほかにも非互換なレギュラー8という規格もあったが省略。

簡易テレシネとは

テレシネとは、フィルム映像をビデオ信号に変換することを指す。
8mmフィルムは幅が8mmのフィルムで、一秒辺り24コマ(16コマという設定もある)が記録される。そのため、一コマ一コマをスキャンして映像として再構成するというのが一番フィルムの情報を失わずデジタル化することができる訳ではある(ちゃんとした8mmフィルムテレシネサービスではそうしている)のだが、個人でやるのは難しい。
その代わり、フィルムを映写機で映写し、それをカメラでビデオ撮影することによってデジタル化をするというのが簡易テレシネである。直接スキャンするのに比べて画質は悪いにしろ、何が写ってるかは把握できる。

映写

使用した機材は次のもの。

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ELMO ST-180

  • 映写機: ELMO ST-180
  • ビデオ撮影用カメラ: Pentax K-50 (レンズは50mmの短焦点レンズ)

映写機は内部のベルトが溶けてベトベトになっていたため、次のページを参考にアルコールで清掃し、新しいベルトを装着した。

映写機にフィルムをセットする時に、爪の引っ掛かりが悪かったりして何回やってもオートローディングがうまくいかない場合があった。この場合、ロードするフィルムの先端を、真ん中をちょっと膨らませ気味にきれいに切ってやることでうまくロードできるようになる場合があった。しかしこれもたまたまうまくいっただけで逆効果の可能性もある。
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フィルム自体を切りたくない場合は、白リーダーフィルムをつなぐ。フィルムをつなぐためにはスプライサーとスプライシングテープが必要。
白リーダーフィルムは次のようにスーパー8用のものをebayで購入したが、日本で通販しているところもある。

また、一度上映中にプーリーのベルトを溶着した部分が切れてしまい、フィルムが進まなくなってしまった時があった。このとき、ハロゲンランプの熱ですぐに画面が溶けだして、フィルムが焦げる独特の匂いが漂った。何かあったときにすぐに電源を切れるようにしておかないと、作品を台無しにしてしまう可能性がある。
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こんな感じにフィルムが沸騰するのが見える。

撮影

4つ切りサイズ(379×539mm)の白画用紙を買ってきて壁にテープで貼り、スクリーンとした。
映写機はちゃぶ台の上に乗せて壁に投影し、なるべく画面が正方形になるような位置に調整し、それが収まるようにスクリーンを設置した。

映写機をカメラで撮影し、ちらつきがなくなるように24fpsに調整しようとしたが、電源入れたてとしばらく動かして温まってからでは速度が変わるため、そんな神経質にならなくてもいいかもしれない。それよりも、ある程度ビデオカメラの絞りを絞った方が上下を動くバーが見えなくなり効果的かもしれない。

一眼レフカメラは小型の三脚に固定し、動画撮影機能で撮影した。この時、フルHD(1920×1080)の24fps(となってるけど実際は23.97fpsだった)で記録。手ブレ補正は切る。絞りはやや絞り気味にしてシャッター速度が速くなりすぎないようにし、ちらつきを軽減させる。
音声はヘッドフォン出力からパソコンのオーディオインターフェースにつないで録音し、後で映像に音を合わせることにした。
露出は固定せず、絞り優先自動露出にした。露出を固定した方が良い結果が得られる可能性があるが、フィルム毎に露出を調整しないといけないため、全体を通してそこそこ見れる結果になる自動露出とした。

カメラで撮影した先頭でこれから映写する作品タイトルを喋って記録しておいたが、これは編集の際に役に立った。タイトルをカメラで映すのでもいいと思う。

音声

映写機には音声のステレオミニジャック出力があったため、そこからPCに接続し、音声はPCで録音した。

音声が記録された8mmフィルムは音声がフィルムの両脇に2トラックあり、バランスよくミックスした状態で上映しないと音が偏った感じになるっぽい。映写機に2つのトラックの音のバランスを調整するつまみがあり、それを弄って調整する。音のバランスはフィルムごとに調整する必要がありそう。次の動画のように売られていたフィルムには音声バランス調整用の映像がついていたようである。
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(via 簡易テレシネ – こもれび倶楽部)

映写機の音声には全体に「ブーン」というハムノイズが乗っている。
映写機のボリュームが小さすぎるとノイズに埋もれてしまうし、大きすぎると今度は録音時にクリッピングが発生し音割れが起きる。作品ごとに音量等は異なるので、試行錯誤して探るしかないかもしれない。

ハムノイズはAudacityなどで除去できる。音声はAudacityで正規化を行ってからハムノイズを除去した。

Adobe Premiereでの調整

映像は23.97fps(カメラの映像に合わせる)、サイズは1280×960とした(4:3)。
映像と音を配置、シーケンスを映像に合わせるか聞かれるので合わせない、エフェクトコントロールタブから、モーション→位置・スケールを弄ってだいたい画面サイズに合わせる。
その後、エフェクト→ビデオエフェクト→ディストーション→コーナーピンを映像にドラッグアンドドロップ
エフェクトコントロールでコーナーピンを選択、ピンの場所を弄って投影された画面を変形させ、4:3のフレームにフィットするようにする(今回はPC閲覧用のため、セーフティゾーンを考慮せず、画面ぎりぎりにした)
映写機の電源を入れる際にノイズが発生するので、それを基準にして映像と音声の同期をするとよさそう。