にせねこメモ

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『みならいディーバ(※生アニメ)』――Vtuber時代を先取りした怪作

この記事はクソじゃないアニメ Advent Calendar 2020の4日目です。まだいっぱい空きがあるので紹介したいアニメがある人は書いてくださいね。

はじめに

あなたは『みならいディーバ(※生アニメ)』を知っていますか?先進的な作品であったにもかかわらずあまり知られていないので、みなさんにぜひ知ってもらいたくてこの記事を書きました。

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©(※ネタバレ注意)最終回は生でライブやるかも委員会

概要

『みならいディーバ(※生アニメ)』はNOTTVで2014年7月-9月に月曜21:00から生放送されていました。全10話。1話約50分とちょっと長いです。私はNOTTVは契約していなかったのでニコニコ動画で見ました。
制作総指揮はニッポン放送の吉田尚記ひさのりさん、監督は『てさぐれ!部活もの』の石ダテコー太郎さんです。アニメーション制作は、後に『けものフレンズ』を作ることになるヤオヨロズ*1


本作は生アニメという触れ込みで、声優の村川梨衣さんと山本希望のぞみさんがキャラの声を担当するだけでなく、慣性式モーションキャプチャスーツ*2を身に着け3DCGのキャラをリアルタイムで動かして、そのアニメーション映像を生放送する、という試みです。

これだけ聞くと最近のVTuber/バーチャルライバーと似たようなことをしているように感じられるのではないでしょうか。ただ、キズナアイが活動し始めたのが2016年11月からなので、その2年以上前と考えるとかなり時代を先取りしていたように思われます。今でこそVTuber/バーチャルライバーが一般的になっていますが、当時は同様の試みはほとんどありませんでした。

全体の雰囲気としては声優ラジオに映像がついた感じでもあります。アニラジや声優イベントが好きな人、『gdgd妖精s』(ぐだぐだフェアリーズ)、『てさぐれ!部活もの』などのノリが好きな人は気に入ると思います。

ストーリー

ストーリーというようなストーリーはないのですが、設定としては、音声合成ソフト「バーチャルディーバ」シリーズである蒼井ルリと春音ウイは、ほとんど知名度がなくて持ち曲がない。そこで、自分たちで曲をつくってネットにアップして有名になろう!という話です。作曲は難しいので、拾ってきた曲(という設定で作曲はGhost Writerこと井上純一さん)に歌詞をつけることならできるだろう、ということで作詞をすることにしました。


番組の流れとしては、前半で作詞をします。まず用意されたインスト曲を流し、Twitterで歌詞のアイデアを募集して、それを元にルリとウイが歌詞を考えます。後半は、裏で音楽担当の井上さんが歌詞を急いでまとめている間、適当なコーナーが入ります。
後半のコーナーは生放送のリアルタイム性を生かしたもの(別の局のテレビを見てコメントをする)、双方向性を生かしたもの(ライブビューイング会場と通話する、巨大掲示板ニュー速VIPにスレを立てる)、モーションキャプチャを活かしたもの(ジェスチャーゲーム)、その他大喜利的なものなどがありました。
そして番組の最後でできた曲を歌う、という流れです。途中で(たぶん)キャリブレーションや歌の練習等の時間稼ぎのために事前収録された映像が挿入されます。

どこで見られるの?

1話はニコニコ動画で無料で見れるのでここに貼っておきます。


2話以降はニコニコで購入すると見れます。あとはBlu-ray/DVDがあるので買うなりレンタルするなり…

とはいえ、アニメ作品というよりアニラジやアニメイベントみたいな感じの面白さなので、集中して見ているには物足りないものの他のことに気を取られて聞き逃すと話が分からなくなるので、ニコ動でコメントと合わせて見るのがよさそうです。


1話では生放送ということでシステムトラブルに見舞われ、ルリが両手を広げた状態で動かなくなり、はりつけ状態になりました*3Blu-rayには「スタッフインカム罵声コメンタリー」と称して裏方スタッフの通信が収録されているのですが、それを聞くと現場はそれほど罵声飛び交う感じではなく割と和やかな感じで良かったです。生放送ならではのトラブルも楽しむのがこの作品の楽しみ方といえるでしょう。まあそれ以降はトラブルはあったものの、磔になることはなかったんですが……クリスマス生ライブというライブイベントでまた磔になりました。最初と最後で同じトラブルが起こるというのもなんか運命みたいなものを感じます。

作品の魅力は?

作品の先進性はありますが、技術的な面では現在はもっといい技術がでてきたりコモディティ化が進んだので、今見返してもあまり技術的にすごいとは思わないのではという気もします。しかし、新しいことをしようという制作陣の姿勢が伝わってきて、その勢いはすごいものがありました。例えば、クリスマス生ライブでは当日のライブで歌った音声を(1曲)USBに入れて配るという試みがありました*4。さすがに全員には配れないのでUSBの「おみや」つきチケットは倍率高かったみたいですが…。

それよりなにより一番は何といっても演者の二人が魅力的だというのがあります。村川さんは中の人そのまんまって感じでノリツッコミが面白く、話し出すと長くなるので尺泥棒と呼ばれることも。山本さんはちょっとズレたボケをしたり謎のダンスがキレッキレです。どちらも方向性は違えどやべーやつという趣があります。お二人ともめっちゃ動くので観てて飽きません。その代わりキャリブレーションが頻繁に発生しますが…
演者がめちゃくちゃに動くのでたぶん位置ずれが酷いことになっているんですが、そこで動きを抑えるように指示して解決する可能性もあったかもしれません。しかしそれをせず、たぶんキャリブレーションとかを増やすことで対応してキャラを動かせ続けたのが最高ですね。スタッフの攻めの姿勢を感じます。すごい動きをするとシステム担当のスタッフが苦い顔をしてたそうです(まあそりゃそうですね)。

アニメ風のアバターを用いたリアルタイム配信となると、コメントを用いた視聴者とのコミュニケーションを主体にしたものが多いですが、本作は時間制限があるのと曲を作ることを中心に据えていてるので、緊張感が生まれています。
というか、50分枠で作詞して最後に歌うって正気か?って思います。それも毎週…。

生パートのBGMはLiLiのHajimeさんによる生演奏で、会話に応じて曲調やメロディが変わったりするのも見どころ(聴きどころ?)です。自然なので気づかないですが…。

生放送なのでシステムトラブルが結構発生するのですが、演者の二人がそれをネタにし、トラブルも楽しむようなしたたかさがありました。トラブルとかでなんとなく裏側が透けて見えるのが好きです。NOTTVでは水面下(スタジオの様子)の放送があったり、Blu-rayなどではスタッフの通信音声や水面下のダイジェストが収録されていたり、裏方の情報が供給されているので、そういうのが好きな人はBlu-ray見てくださいね。

エンディングテーマ

作中でつけられた歌詞はカオスなのが多いです。
つくられたエンディングテーマはYouTubeに上がっています
その中で特に好きなのを次に挙げておきますね。一つ2分程度で見れるので見てください。本編見ずにこれだけ見ても意味が分からないかもしれませんが……まあ作詞のノリはわかるんではないかと思います。

第5話エンディングテーマ曲『筋肉に願いを』


第9話エンディングテーマ曲『現実逃避ラプソディー』

さいごに

記事を書くにあたって作品を最初から見返しました(時間があまりとれなかったので最後まで見返すことはできませんでした…)が、やっぱり演者のこの二人面白いですね。いきなりコント始めたり…

これアニメか?という向きもあると思いますが、まあ、アニメって言ってるしアニメということで紹介しました。
企画者がラジオ畑の人なので、アニラジみたいな作品ですが、そんな雰囲気が好きな人は楽しめると思います。見てね。

リンク

みならいディーバを紹介してる先駆者が居ました。私より紹介が上手く熱があるので、貼っておきます。
huyukiitoichi.hatenadiary.jp
note.com

*1:ヤオヨロズ、2020年3月で解散していたみたいですね……さっき調べて知りました。

*2:商業アニメで使われるモーションキャプチャは光学式が多いですが、光学式は高品位なモーションがとれるものの、専用のカメラをたくさん設置したスタジオを必要とします。一方で慣性式モーションキャプチャスーツは、得られるモーションの品質は光学式に劣るものの、スタジオを必要としないので、ライブ会場等でも使うことができます(実際にみならいディーバではサイエンスホールとかでライブをしました)。その代わり誤差が蓄積してどんどん位置がずれていくので定期的なキャリブレーションを必要とします。

*3:3Dモデルデータを作る際に両腕を広げた状態で作成するので(Tポーズといいます)、モーションが適用されないとその形になります。

*4:投票で選ばれた曲をライブの最初に歌い、その音源をUSBにコピーし、ライブ終了後に「おみや」つきチケットを持ってた人に配られました。